「太宰治スタディーズ」blog

研究誌「太宰治スタディーズ」を発行している「太宰治スタディーズ」の会のメンバーによる宣伝&情報交換のためのブログです。

『太宰治と戦争』(ひつじ書房、2019.5)を刊行しました!


太宰治と戦争 (ひつじ研究叢書(文学編) 11)

太宰治と戦争 (ひつじ研究叢書(文学編) 11)

 http://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-89476-977-9.htm


太宰治スタディーズ」の会による初の単行本、『太宰治と戦争』(内海紀子・小澤純・平浩一編)がひつじ書房から刊行されました。

 本書は、太宰治という作家/作品(像)を任意の点としながら、歴史的文脈としての“戦争”との接線を多角的に探り、同時に、必ずしも“戦争”とは直結しない言葉の特異点に目を凝らす試みです。本書の構成として、はじめに「太宰治スタディーズ」の会による【共同研究】を置き、三部立ての【論文】篇に、11本の論文と、ゲスト執筆者(五味渕典嗣氏・若松伸哉氏)による2本のコラムを収めます。以下、目次を掲げます。

 

【目次】

まえがき―“戦争”に立ち会い続けた言葉  小澤 純

【共同研究】クロニクル・太宰治と戦争 1937-1945 「太宰治スタディーズ」の会/内海紀子・平 浩一 編

一九三七年五月― 八月 「不思議な戦争」の始まり前後 吉岡真緖
一九三七年九月―一二月 「文芸復興」と太宰治「前期」の終焉をめぐって 平 浩一
一九三八年一月― 四月 高揚と統制 野口尚志
一九三八年五月― 八月 小説空白期にみる〈生〉獲得の前進 長原しのぶ
一九三八年九月―一二月 〈社会化〉する作家たちと御坂峠の太宰治 滝口明祥
一九三九年一月― 四月 大陸へ〈転進〉する文学の欲望  内海紀子
一九三九年五月― 八月 芥川賞と「素材派・芸術派論争」の行方 平 浩一
一九三九年九月―一二月 「こをろ」創刊と泉鏡花の死 大國眞希
一九四〇年一月― 四月 紀元二六〇〇年の幕開けと系譜小説 斎藤理生
一九四〇年五月― 八月 文芸銃後運動の拡大と東京オリンピック・ロスの磁場 小澤 純
一九四〇年九月―一二月 始動する大政翼賛会文化部と文壇新体制 松本和也
一九四一年一月― 四月 見えざる転換―芥川賞と「こをろ」を例として 大國眞希
一九四一年五月― 八月 独ソ開戦をめぐる状況と「名スタイリスト」の進む道 井原あや
一九四一年九月―一二月 太平洋戦争開戦と文学 内海紀子
一九四二年一月― 四月 「開戦」と文学―〈連続/切断〉の問題 平 浩一
一九四二年五月― 八月 南方と文壇の「知的冒険者」 井原あや
一九四二年九月―一二月 〈思想戦〉のなかの「花火」 野口尚志
一九四三年一月― 四月 「国民文学」への期待と〈非国民〉としての「鉄面皮」 小澤 純
一九四三年五月― 八月 アッツ島玉砕をめぐる文学場・文学者の動向 松本和也
一九四三年九月―一二月 私小説「作家の手帖」と戦記物「軍隊手帖」と 大國眞希
一九四四年一月― 四月 創作発表媒体縮小期における執筆活動 斎藤理生
一九四四年五月― 八月 新設文学賞と朗読文学 吉岡真緖
一九四四年九月―一二月 貪欲なる〈生〉―書くことへの執着 長原しのぶ
一九四五年一月― 四月 空襲と疎開、そのなかで書き続けるということ 滝口明祥
一九四五年五月― 八月 あの戦争の終わりと敗戦の始まり 内海紀子

Ⅰ “戦時下”の文学(者)

1章 戦時下における〈信〉という問題系―太宰治と戦争 滝口明祥 
2章 総力戦体制下の〈家庭の幸福〉―「花火」における青年の身体 野口尚志 
3章 戦時下の朗読文学―作家・メディア・投稿 井原あや

コラム パロディの強度―「十二月八日」論のために 五味渕典嗣

Ⅱ “聖戦”と“敗戦”の時空

4章 「散華」における“小説”と“詩” 松本和也 
5章 『津軽』論―言語空間『津軽』の反逆 吉岡真緖
6章 「瘤取り」論―「前書き」・『コブトリ』・『現代』を手がかりに 斎藤理生
7章 「竹青」―漢籍の世界と「私」の黄金風景 大國眞希

コラム 「私の胸底の画像」を語る『惜別』―伝記小説の流行と太宰治作品 若松伸哉 

III “戦後”への架橋

8章 この戦争の片隅に―「佳日」から戦争表象を考える 内海紀子
9章 『パンドラの匣』論―戦争とキリスト教 長原しのぶ 
10章  「日本一」を書くこと、書かないこと―「散華」・『お伽草紙』・「未帰還の友に」のテクスト連関 小澤 純
11章 「戦後」の日付―志賀直哉「灰色の月」と『世界』、あるいは太宰治 平 浩一 

編集後記―あとがきにかえて
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